おかえり、そして3行にっき。

劇団笛令和3年度新入生歓迎公演、1日目・2日目共に無事終演致しました。厳しい情勢の中、ご来場頂きましたお客様に心から感謝申し上げます。

  劇団笛 第28代座長   藤井唯
















































































































終わると思いましたか?
私が本当に3行で終わらせるなど、出来ると思いました?…無理ですよ。無理に決まってるんです。
1年半ぶりの生舞台、終わった後のみんなの顔。

それを見ちゃったら、何行あったって足りない。

お客様をはじめ、たくさんの方に感謝が止まりません。今まで散々でしゃばっていた笛にっきですが、とうとう本当に終わりを迎えるようです。

さて、「座長」として最後の仕事でもしますかね。





2018年、劇団笛の門を叩いた。

その時観た光景は今でも忘れられない。

私たち向けの新入生歓迎公演では、「これ、歓迎されてるんか!?」ってくらいのドシリアス劇が上演された。
だけれども、一台詞目の魅力的な発声に、引き込まれていく照明、怖さを増長させる音響、素敵なチケットやビラ、衣装…。

私が入団を決めるのには充分だった。
高校の頃音響をやっていた私は大学でもまた、何かを「創る」ということがしたかった。

初めての舞台、当時1年生だった私にとって、3年生は手の届かない存在であった。
何もかも凄くて、何でも教えてくれて、演劇に向かう眼差しは真剣だった。
その眼差しに、私は信頼をおいたのだと思う。

当時の座長もまた、憧れだった。
舞台上の一挙手一投足が魅力的で、かつ日常は適度にゆるいと見せかけて案外人のことをたくさん見ている方だった。打ち上げで声をかけてくれた時のシンプルながらに色々考えさせられる言葉が印象的であった。


そんな先輩方を見て、私は座長をしたいと思った。素敵な同期とまだ見ぬ後輩、笛という場所をとにかく自慢したくて、座長になりたいと言った。
もっともっとみんなを輝かせたかった。

15人。

入団当初の同期の人数。

5人。

現在の同期の人数。


集団に人の出入りなんてつきものだ。
その人の判断であるし、その人にとってこの先幸せな選択となるのであれば、応援する他ない。

それでも、苦しかった。悲しかった。

どうしてみんないなくなっちゃうのって、何度も思った。もう誰も居なくならないで欲しいと、心の中でそっと思った。引き止めるのは自分勝手だろうか、その人を苦しめるだけだろうか……


様々な理由が交錯して辞めていった。

私に言った理由は本音かもしれないし建前かもしれない。それはわからない。
個人の都合もあるとはわかっていても、いざ面と向かって辞めます、と言われれば、代表としてある種の罪悪感を抱いてしまった。

せっかく笛に入ってくれたのに、私はその人が「残りたい」と思えるような運営を出来てないのではないか、と。


同期の間に修復できない亀裂が1度入ったことがある。

今でこそ軽く話せるものの、当時は心が折れそうだった。その時はまだ座長ではなかったけれども、
これから一緒にやっていく同期の問題に頭を抱えたし、怖かった。とっても怖かった。

言っていることが的を射てようが、射てまいが、
たぶん私たちはぶつかり方を間違えたんだろう。

ぶつかり方が苦手な学年だった。今思えばそう。

大人のように距離をとる人、真っ向から一方的にぶつかる人、色々混ざりあって結局はうまくぶつかれないまま終わる。それが取り返しのつかない亀裂になった。


そんな問題が起きたあと、正式に座長に就任。

就任した後の冬公演は、今まで拠点としていた倉庫の引越しとちょうどぶつかった。
引越し作業と公演練習の並行、そして学業。

大きな波の後に、また乗り越えるべき壁ができた。

今までの倉庫に感謝しながら、現在お世話になっている倉庫へ。倉庫を貸してくださることだけで有難く、笛がどんなに暖かく見守られているか痛いほどわかった。

頑張らないといけない。
そして、私もみんなも、演劇がしたいんだ。
やってもやっても満足しない、褒められれば嬉しいけれども指摘がなければ悔しい、そんなめんどくさい心情をもってでも、とことん追求する演劇がみんな大好きだった。


座長として演出として、新体制で初めて迎えた冬公演は、公演時間も30分程度の小規模なものになった。それでも、今までにない新しい形として、全力は尽くせたんじゃないかと思う。

「お客様」いてこその公演、「お客様」の時間とお金を頂いているという事実、それらを改めて考えることができた、そんな冬公演だった。

何のために演劇をやっているのか、そんなことを考え始めたのもこの頃である。


もっと演出の勉強をしたい、もっと演技を練習したい、そんな気持ちの高まりと共に春を迎える。

まだ見ぬ1年生に期待して春公演の練習を始めた直後のこと。


課外活動全面活動停止。


いつ再開できるのか、どうしたらいいのか、
どこまで許されるのか、右も左もわからないまま、
私たちの1年間がすっぽりと抜けてしまった。

一体2020年はどこに姿を消したのか、舞台だけがただ奇妙に佇むのだった。

それは舞台に人がいないという淋しさ、はたまた恐ろしさだった。もしくは、人は会えないのに舞台はそのまま変わらずそこにあるという皮肉。ひっくり返せば安心、それでも情勢の中ではどうにもこうにも皮肉的に見えてしまっていけなかった。


座長として情けない。あの1年を「苦しい」とでしか表現できない。

ぶつかり方、うまかったらなぁ。

ここにきて、我々の学年の弱点が効いてきた。
会えないのをいいことに、みんなうまく距離をとってしまった。みんなオトナになってしまった。

離れていく心を実感できた。
1人1人きっとみんな色々考えてくれていたし、
みんないい子たちなのだが、
ただただ生舞台を取り戻そうと抗う心に
ひしひしと感じる距離感は致命的なものだった。


もう戻ってこないんだろうか。
大学の1年はとっても貴重でとっても短い。
もう、生の舞台は、無理なんだろうか。

試行錯誤、こんなガイドラインがある、こんな決まりを守れば大丈夫。色々なことを考えたけれども、
まず公演の目処さえ立たなくなってしまった。

延期・中止続き、いつかの倉庫の引越しで金銭面も不安しかなかった。


そのうち何も無いまま本来の引退の時期がきて、
引き継げなくて、伸ばして、また引き継げなくて、伸ばして。

一向に引き継いでもらえない運営、追い込まれた1個下の後輩。

きっと自分が追い詰めているんだろう。
わかってはいたけれども、後輩の気持ちが充分にわかってしまったけれども、だからこそ辛かった。

滞る運営、離れた心、停止続きの活動、迫り来る大学の最終学年。

焦っていた。

たくさんの人の支えで、亀裂が入ろうが引越ししようが耐え抜いてこれたのに、

もしかして、ここで私が潰してしまうんだろうか、と。

色々な人の想いが詰まったこの表現の居場所を、

消してしまうんじゃないか、と。


1番追い込まれていた時、もう早々に諦めて学業に専念しようかと思った。

1度やったことは最後までやり抜くと決めているが、生まれて初めて自分から諦めようと思った時がきた。

どれくらいの罵倒を浴びせられるだろう。
頭を下げ続けて、それで許されるのなら、いっそ………






それでも、やっぱり私は逆境こそ成長の時だと思った。苦しい時こそ頑張らないといけないと思った。


月並みな表現でカユイかもしれないが、そう思った。



先輩方の舞台をやる際の真剣な眼差しを思い出して、少しでも希望があるなら、と藁にもすがる想いで新入生を呼び込んだ。


止まっていたTwitterを動かすところから。
オンラインで茶話会をして、体験活動を作って、規制が緩んだ瞬間を見計らってワークショップしたりして。また会えない日も続いたけれど、冬に説明会を開いた時も変わらずたくさんの可愛い笑顔を見せてくれた。


そうしたら、どうだろう。やっと対面で活動ができる!となった2021年。
1年の空白があったのにも拘わらず、なんと10名もの2年生が、熱を持ってそこに立ってくれているではないか。


その熱に触れた瞬間、「折れる訳にはいかない」
座長としての矜恃かもしれない、ただの自分勝手な想いかもしれない。でも確かに、私はそう思ったのだ。人間が人間に与える影響は、思っている何倍、何十倍もの力を持つ。



改めて、今笛が続いているのは、2年生の人徳もあってこそだろうと思う。身内だけども。
こんな素晴らしい2年生が入団してくれたのも、粘ってくれた3年生の人徳なんだろう。













きつかったね。

しんどかったね。

たくさんたくさん悩んだね。

3年生、ほとんど4年生みたいな扱いをしたのに、

よくついてきてくれたよね。

辛かったね。でも、、楽しかったよね。

また君たちの演出や演技を観ることができるのを、

心の底から楽しみにしてる。

もっともっと座長として傍に寄り添ってあげたかった。

酷い突き放し方をしたけど、食らいついてきてくれてありがとう。

時々ご飯でも奢るから、色々な話をもっともっとしてたいな。演劇論には終わりがないね。




























ねえ2年生たち、初舞台、どうだった?

「楽しかった」「幸せだった」

そう言ってくれたこと、きっと私はずっと忘れません。

ずっとずっと待っていてくれたね。

いつになったら活動できるんだろうって

不安にばかりさせたね。

学業との両立も大変だったよね。

もっとうまく計画を立てられたら良かったよね、ちょっと無理させちゃったんじゃないかと心配です。

ねえ、次はどんな舞台がしたい?

君たちはどんなシナリオが好きなんだろう。

君たちがする演出、どうなるんだろう。

舞台監督は誰がするのかな。

次の代の形が、楽しみで仕方ありません。

きっと私は引き継ぎのために少し残るけれど、

でしゃばり過ぎない程度にしばらく見守っています。

何か悪いことが起きそうだったら、起きる前に相談してください。それくらいなら、力になるよ。

話ならいつでも聞くよ、辛かったらいつでもおいで。

時々遊びに誘ってくれたら嬉しいな。









































4年生たち、絶対卒公やろうね。

みんながいたから座長でいられた。

平凡な表現しかできないけれど、

着飾るよりきっとそれがいい。

私の座長の8割を構成しているのは4年生。


また、舞台に立とうね。約束。














集団をまとめるには色んな形がある。

でも、この春公演がきっと私の座長としての形だった。

1度は延期になったけれど、それもこれも昨日という素晴らしい日のため、そう思えば今までの出来事なんてなんの苦でもない。

厳しさで統制した訳ではない。

「馴れ合い」「ダレる」「仲がいい」「チームワークがある」

そこの良いとこのバランスをしっかり取れたと私は思う。これだけは、胸を張って言えるし、公演当初の「ダメ出ししやすい雰囲気を作る」ことも達成できたと思う。


チーム作りとしては、私は座長として役割を果たせたんではないかと、勝手に思っている。

それでも、このバランスを通してくれたのは紛れもない3年生である。演出である。
渋い役どころとわかっているのに、厳しい言葉も投げてくれた。雰囲気を壊さない厳しさをぶつけてくれた。それに関しては頭が上がらない。

2年生だって、こんなに積極的な人たちは見たことがない。むしろ元気すぎるところもあるが、
それがいい。そのままでいい。


……ん?いや、人の話は聞きなさい!!!!
聞けるようになったらもっと強くなれるよ。












身内語りを延々としてしまい、お恥ずかしい限りでございますが、ここまでこれたのはやはり
顧問の先生を始め、OB・OGの皆様、地域の皆様、ご来場頂きました皆様、たくさんの方のおかげです。

改めまして、劇団笛を見守ってくださり、本当にありがとうございます。


後輩たちはいささか元気がよすぎますが、
彼らはきっと、涙だけで公演を終わらせない、
演劇というものに真っ向から向き合える子たちです。

ですから、これからも劇団笛を見守ってくださると幸いです。座長として、最後のお願いでございます。








まだ見ぬ1年生、我々の劇はどうでしたか。
一緒に、創ってみませんか。




この先何が起きるかわかりません。
けれども、舞台上での咄嗟のハプニングに、
「みんなで」対応する姿をみていたら、
あぁきっと大丈夫なんだなーって、
そう思いました。


もう少し座長として笛の自慢をしていたかった。

でももうそろそろ終わりのようです。

次の形を見せてください。

君たちの足で立ってください。
























後輩さん後輩さん、幸せでいてください。







おかえり、熱い舞台。
おかえり、温かな笛。

ただいま、劇団笛。

そして、さよなら。










じゃあね、ばいびー。

今度こそ 第28代座長          藤井唯





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