クローン人間
お久しぶりです、3年の小林です。
ここ最近生で舞台を見たのは今年の7月・・・
それ以降は配信やDVDでしか見ていません。
・・・・足りない!!!刺激が!!!癒しが!!!!!
ですが今年の10月頃に配信で見た舞台がとても面白かったのです。
少しだけその話をします。
役者は2人。1人はAの父を演じ、1人はA,B,C(仮)の3役を演じます。
物語の中心になるのは「クローン人間」について。しかしSFではありません。
自分と同じ顔の人間がこの世に何人も生きているという事実に、
自分自身もクローン人間の1人であるという事実に、
Aは恐れ、怒り、不快感をあらわにします。
そして優しい父親が自分のオリジナルであるBに対し、虐待をしていたという事実に
Aは絶望します。台詞には語られませんが、きっとAは1つの考えに囚われたでしょう。
「もし自分がBとして生まれていたら、父さんは同じように僕を殴ったのか」
自分とは何か、自分を形成するものは何か、アイデンティティとは
SFのようなあらすじからは想像もつかないような、とても深く、悲しいお話でした。
クローン人間とか聞くと小学生のころ読んでた鉄腕アトムを思い出すんですよね。
死んでしまった息子を取り戻すために息子ソックリにつくられたロボット。それが鉄腕アトム。
久々に読んでみようかな・・・
この演劇はもとはイギリスでつくられた戯曲で、今回はその日本版を見たという訳なんですが、とにかく難しいんです。説明が少なく、台詞も「ん?どういうこと?」「今何をしゃべってる?」と思うところも多々。なのにまあ、面白い。
脚本の隙間づくりの技術、そしてその隙間を埋める技量を持つ役者。
シンプルかつガランとした空気のセットの中で、父と子が生み出す緊張感や、
歪んだ愛情、執着、依存の関係性はとても目を見張るものがありました。
Bがとにかく可哀想でね・・・どんなに父親に酷いことをされても父の支配から離れられないその心情やこれまでの人生が痛々しく伝わってきて・・・
そしてA,Bもとてもいいんですが、何より、この物語にある意味オチをつけたCの存在。
Cは自分のアイデンティティというものを確立しているように見える男で、
父と一切会話にならないんですよ。父やAやBはそもそも「他者が自分をどう見るか」をアイデンティティだと思っている節があり、Cは「自分が他者とどうかかわってきたか」を中心に生きているんです。
ラストはCから父への、とても皮肉なセリフで終わります。
なんとも言えない居心地の悪さ、悲しさ。何かを考えなきゃいけないようで、何から考え始めたらいいかもわからない。急に芝居の世界から現実に突き放されたようなラストでした。
楽しく分かりやすい芝居も大好きですが、たまにはこういう芝居も、人生の栄養剤です。
今回の芝居でも、自分とは何者か、アイデンティティとは何かという考えや解釈が含まれた稽古になっているなあと感じています。
その答えがでるのかはたまた出ないのか。私自身、楽しみです。
【劇団笛 第60回 冬公演】
『赤鬼』
脚本:野田秀樹 演出:佐藤美咲
日時:令和5年1月15日(日)
(30分前から入場可能)
場所:クリエイティブ・スペース
赤れんがホールII
料金:カンパ制(入場無料)
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