いいとこどり

 こんばんは。4回生の吉岡です。これが現役最後の笛にっきになってしまうようです。心を込めて書きましょう…。ご覧のみなさま、どうか最後までお付き合いくださいませ。

 「笛に入って良かった」

 私がまだ大学1年生だったとき、笛の茶話会で先輩からこの言葉を聞いて、私は劇団笛に入る決心をしました。

 その頃の私は、大学でなにか打ち込めるものを見つけたいと思っていました。なにか夢中になれるものに没頭して、新しくできた友達と仲良くなって、大学生だから出来るような楽しいことをたくさんして、キラキラした大学生活を送りたかったんです。

 そんなこんなで、当時友人の付き添いのような形で参加した笛の茶話会で、あの言葉を聞いたわけです。私と話をしてくれていた先輩はとてもイケメンで、キラキラした人だと私は感じました。そのキラキラした人が「笛に入って良かった」って言っていたんです。もうこれは間違いないと思いましたよ！！「この人が入って良かったって言ってるなら私も笛入ってみよ！」となったわけです。

 気合い十分で入団。活動が始まったそばからすぐオーディションでした。人前で演技なんてほぼ初でしたが、不思議とそんなに緊張しませんでした。笛の雰囲気があたたかかったからです。自分の居場所があるって感じ。たくさん笑って、話して、同期とともに劇団笛に溶け込んでいく。そんな時間は本当に楽しかったです。

 しかしわたしはなんと言ってもとにかく目立ちたがり。不安よりも喜びのほうが遥かに大きかったのです。やる気満々で、「何でもやります、覚えます！笛だいすき！」状態です。毎日夜遅くまで練習があっても、土日まで道具作業で拘束されても、「笛メンに会う」という目的のためなら苦ではありませんでした。笛のメンバーが大好きで、もっとずっと仲良くしたい、と思っていたんです。

 そんな素敵な気持ちのまま終えられた、私たちの初公演。このまま次の公演からも、こんな風にみんなで楽しく笛はやっていくんだ、と思っていました。

 私たちの2回目の舞台、冬公演。仲間の間には修復できない亀裂が入りました。何人かの仲間が笛を去りました。ぽっかりと穴が空いてしまって、残った私たちは、それを呆然と眺めていることしか出来ませんでした。それからは、みんなで協力して一生懸命穴を塞いで、ごまかして、なんとかしていきました。でも、やっぱりごまかしていただけ。私たちに出来てしまった傷は、どんどん取り返しが付かない状態になっていったように思います。塞がりかけたところにまた新たな衝撃が加わって、加わって、加わって加わって加わって、この穴が塞がることはないんだと、私は思っていたのです。

 …もしかして、もう大丈夫？

 そう感じたのは最近のことです。

 

 コロナ禍で公演が打てないと悩んでいた頃のいつかの会議で、私はこう提案しました。

 ひとりがこたえました。

「…別に仲良くなんてしなくていいんじゃない？」

 ………。

 ほかに誰も何も言いませんでした。

 私は諦めていたんです。

 笛と距離を置こう。そうしたら苦しくない。後輩にはできるだけつらい思いをして欲しくないから、そのためだけに笛で頑張ろう。

 そういう気持ちで、笛に残っていました。

 …それからしばらくして笛に新しい風が入ってきて、また公演を打つことになりましたね。私は就活や卒論のことでいっぱいいっぱいで、あまり練習に顔を出す機会を作れませんでした。他の同期や一つ下の後輩が積極的に活動してくれて、本当に大変なことだったろうと申し訳なく思います。そして私が行けていない間に、笛のみんなはびっくりするほど仲良くなっていました。

 私が諦めていたもの…あれ？実現されてるじゃん。もう大丈夫なんだ。私たち、仲良くしていいんだ。できるんだ。

 どうしてこうなれたのかは、正直よく分かりません。でもそんなのどうだっていいです。そうとなったら私はこのビッグウェーブに乗るだけなのです。

 私はひとりで、みんなと仲良くなるのは諦めようと思っていましたけれど、どうやら同期たちはそんなこと考えていなかったみたいです。久々に練習に顔を出して、みんなの笛にっきを読んで、やっとみんなのことがわかった気がします。…ここまで笛に残っていて良かった。大正解です。同期たちよ、今も昔も大好きだよ。笛メン箱推しだよ。もちろん後輩ちゃんたちにもBIGLOVE。

 わたし、笛に入って良かった。心からそう思えます。

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劇団笛令和3年度新入生歓迎公演

『贋作・不思議の国のアリス』

作・松本大志郎　演出・杉本涼真

７月１５日（木）２０：００開演

７月１６日（金）１９：００開演

（３０分前から入場可能）

＠大学会館大ホール　入場料無料