However dear one exeunt, forever, here lastly manent

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

四年の杉本涼真と申します。

初めましての方は初めまして、以前お会いした方はお久しぶりです。

いえ、本日は舞台監督補佐兼演出助手の杉本涼真として笛にっきを執筆するべき日ですね。いよいよ公演も間近に迫りました。明日からは仕込みの準備で、右往左往の大忙しです。そのため、本日は最後の練習日でもあったわけです。程よく真剣で、程よく力の抜けた稽古場でした。きっと、これくらい肩の力が抜けていたほうがいいのでしょう。肩肘張りすぎるのもよくありません。ゆるりゆるりと舞いながら、しなりしなりと撓りながら、しかし、芯だけは折れないように気をつけて、本番まで進んでいこうと思います。

さて、昨日は舞台監督補佐の後輩が笛にっきを担当していました。そこでは、何と私について言及されていました。劇団笛の団長についてのよもやま話を少々。あぁ、そうそう、実は私、現団笛の団長を務めていたりするのです。笛にっきの中で私は、後輩にちくちくと棘を刺され、ぶつくさと文句を呟かれていて、そして、褒められていました。後輩曰く、どうやら私は、話が長く、こだわりも強く、仕事も遅い。だけれども、優しく、全般的に頭もよく、周囲を見れているのだとか。うーん、これ以上ないほどに乱高下している。ただ、嫌な気分ではありません。ふふん、と鼻を鳴らしてしまいそうになる自分がいるのです。いや、いっそのこと鳴らしておきましょう。ふふん!

その子は次のように言っていました。



うちの団長が

どんな想いで、

劇団笛に入って、

空白の期間が生まれ、

そして団長になったかなんて知りませんが、

面の皮が厚い自分たち後輩は、

団長が笛に残したものを、

遠慮なく我が物顔でボロボロになるまで使いましょう。

(「多分大丈夫だし、多分なんとかなる!!」2022.6/7.10:02)



不安を包み隠すような、高らかな宣言です。

ええ、もちろん、いくらでも使い潰してください。継ぎ接ぎだらけにしても構いません。古くなって、使い物にならなくなったら、躊躇いなく捨てても構いません。いや、そもそも使うという選択肢を採らない選択だってありえます。考えて、話し合ってください。そうして決まったことなのであれば、遺品をどのように扱おうと、僕は一向に構いません。

遺品の裏に置き去りになった物語を気にする必要もない。後ろを向いていては前には進めません。些細な石ころに躓いて、派手にこけて、嫌になって、うずくまるのがオチでしょう。それなら、いっそ、堂々と前へ進むといい。屍を超えて行って下さい。あ、でも、お墓はつくってほしいかもしれません。



冗談です。

居なくなる人間のことを考えすぎることは、毒ですよ。過ぎれば、生に疲れてしまいます。いえ、霊に憑かれてしまう、の方が適切ですかね。

いずれにせよ、不在を嘆き、不在に恐怖を覚え続けるのは、堪え難いことです。



ふたをあけたら

なにもはいっていなかった

からっぽなら

なにをいれてもいいのか

それともみえないなにかが

もうはいっているのか

 

ふたをとじても

からっぽはきえない

なにもないのにからっぽはある

はこのなかのからっぽは

そとのからっぽにつうじている

からっぽはおそろしい

 

からっぽに

なにかいれなければ!

なくしてしまったもの

ほしいのにもってないもの

みたこともないもの

どこにもないもの

(谷川俊太郎「からっぽ」『どこからか言葉が』朝日新聞出版、2021年、pp. 94-95、初出:『朝日新聞』夕刊、2020.4/1)



不在は空白、つまり「からっぽ」です。「からっぽ」に、私たちは堪えられません。対処は二つ。「からっぽ」の存在そのものを忘れてしまうか、「からっぽ」を埋めてしまうか、いずれかしかない。しかし、それはどちらも「からっぽ」の否定に他ならない。「からっぽ」は私たちを苦しめる者であると同時に、幸せだったころを示す最後のしるしでもあるのです。だから、どうしようもなくもどかしい。


それでも、いつか。もう一つの選択肢が生じるのだと僕は信じています。

「からっぽ」を「からっぽ」のままで愛するという選択肢が、

それこそ不意に、ぽんっと生まれ出づる瞬間が訪れる。


その期待がわずかでも揺らめいているだけで、僕は満足だったりします。



そうそう、ちなみに、谷川俊太郎さんのこの「からっぽ」という詩。以前、先輩方が引退される際に、私が書いた笛にっきで引用したものです。

あの時は、「からっぽ」を残される身として書きました。

今は、「からっぽ」を残す身として書いています。

不思議なものですね。



最近はしんみり続きですね。

本日もお付き合いいただきありがとうございました。

またお会いしましょう。

といっても、次が恐らく私の最後の笛にっきでしょう。

この挨拶にもいよいよ終わりが来るみたいですね。いやはや、何とも。

それでは、改めまして。

また、お会いしましょう。

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