振り返り ああ振り返り 振り返り
鶫高利です。
遅くなってしまいましたが、第65回公演の振り返るという形で笛日記を書こうと思います。
・役者さん
まずは芭蕉さん、台詞覚えお疲れ様でした!
今回の公演は全体的に台詞が多い!役者は5人ですが、もちろん綺麗に5当分なんてことはなく、まあ芭蕉さんが占めるウエイト「多」でしたね。1人で覚えようにも短い単語での掛け合いだらけ。かと思えば長台詞はとことん長い。台詞覚えの難易度が鬼超えてましたね。
ただ、台詞さえ覚えてしまえば、持ち前の演技力で最高の芭蕉さんを演じてくださいました。煙草の仕草や曾良君との掛け合いのテンポ感、弟子とそれ以外の人との距離感の表現や立ち回りなど、役者さん本人の高いポテンシャルが存分に発揮されていました。
特に表情管理の上手さからくる曾良との掛け合いは稽古で見ていてもとても楽しいものでした。喜怒哀楽が分かりやすく見える且つ師匠像を崩さないというのは、この公演において芭蕉さんを主演たらしめた大きな要因でした。
正直この芭蕉さんでないと今回の公演は間に合っていなかったように思います。
台詞さえ入ってしまえば最高の演技を見ることができる、演出として安心して稽古を見ることができたのも芭蕉さんのおかげです。
本当にこの芭蕉さんでよかったと心から思います。
次に曾良くん、軽さめっちゃ最高でした!
曾良くんも台詞覚え大変でしたね。そりゃそうですよね芭蕉さんの弟子ですから。
今回のキャスティングは役に役者を合わせるというよりは、役者に役を合わせるという方針を取りました。そんな中の例外が彼ですね。
彼、めっちゃいい子なんですよ。普段から育ちの良さが滲み出ているんですよ。
物腰柔らかく、煙草吸っててもチュッパチャップスのそれって具合です。
なので稽古では「軽く」「失礼」「図々しく」の三拍子を目標に。動きもうるさくなんならはねようとこんな感じ。
最初は苦戦していましたが、稽古の後半から一気に変わりました。芭蕉には失礼で天馬には図々しく女にはなんかうるさい、そして一貫して超軽い河合曾良が出来上がりました。
煙草の吸い方もすごく様になりましたしね!
天馬さん、そのまんまです。
役者に役を合わせる云々関係ないんですよ天馬さん。
役者=役でした。
もうね、稽古見てて思うです。ああご本人だなぁって
助手席乗っけて下さいって言ういつもの流れで、船乗っけて下さいって言ったら普段通りの下りになるんじゃないかなぁって思うわけですよ。
天馬の妻になるシーンは苦戦しましたね。
当然です。ご本人でやっていただいてる中、急に女性になって、さらにクソデカ複雑背景抱えながら振り返らなきゃなんですもん。
本当に難しい中形にしてくださってありがとうございます。
そして天馬といえば船のシーン!
芭蕉さんと曾良君がお話ししている間ずっと背景となって船漕いでいただいていたわけですが、まさに絵になるとはこのことですね。
カーンという音から始まり最後黒パンチの上で鈍い音を立てるまで、本当に綺麗でした。
女さんは雰囲気がすごくよかったです。
雰囲気というと色々な要素が総合されていますが、その中でも声色と演技が大きかったんじゃないかなあと思います。特に声色は女さんを採用した大きな理由でもあります。
船のシーンで突然上手から飛んでくる声はこの劇の大きな見せ場でした。
女さんも曾良くんと似た節がありますよね。元気な人なんだろうけど、できるだけ元気な動きになりすぎないようにと気をつけていただきました。
このシーンはそれが顕著です。
ネガティブな感情を入れてもらうよう色々言ってしまいましたが、結局女さん本人がやりやすい声色と演技を取り入れた方が舞台として綺麗にはまりましたね。私も、そういう女像もあるのか、と考えさせられました。
結果、綺麗で哀しい雰囲気が完成されたように思います。
あとこれは役者とは関係ないんですが、今回小道具としておみくじ作って下さいましたよね。それ見て思いました。やっぱ演劇の人間ですね
最後にアトム君、難しい役をよくこなしてくれました。
ロボット、トビオ①、トビオ②、息子、不思議君、根幹の背景、対母親①、対母親②、対父親等々。各種要素の盛り合わせ過ぎて難しすぎキャラクターなんです。
照明チーフが動点Pと呼んで悩んでいたり、音響会議の一番大きな話題もアトムだったりという感じで。
今回この脚本を使わせていただくと決まった時からも、アトムの作り込みについて覚悟はしていたんです。
覚悟決めてました。
覚悟してました。
覚悟してオーディションに臨みました。
するとあらびっくり、ほとんど完成したアトム君がいるではありませんか!
演技はドンピシャで刺さるし、声もしっかり通る。
アトムという人物像、ロボット像が絶妙な具合で出力されるわけです。
懸念点だった動きにロボット要素を持たせるというものも(てかこれオーディション時点ですよ?)たくさん工夫していいものに仕上がりましたし、最高の動点Pでした
・照明さん
照明について、好きなシーンがたくさんあるんです。
まずは特別演出ですね。音響さんと合同で提案されたんですが、まあこれがいいものでした。舞台が始まるまでのわくわく感がいいですし、なにより静かな空間からスタートする今回の公演の始まりを大きく引き立てていたように思います。あんなの全然思いつかなかった、すごすぎる!
そしてなにより船の照明!
あの照明を見ることができた、それだけでもう満足してしまうくらい綺麗な舞台でした。あまりに綺麗で、なによりあの照明が出来たからこそ、あの舞台は完成されたといっても過言ではありません。
あのですね、舞台道具わりとえいやーだったんですよ。いろいろ悩んだ末に、結局もやもやしながらこれなのかなあと道具さんに舞台案を提出していたのですが、、、
あの照明がそのもやもやを最高の自信に変えてくれました。
女とそれ以外を分かつ光とその先で照らされるトビオの墓。なによりその墓によってスクリーンに作られた影を見てこれだ!と思いました
後ろに配置していただけのボックスの意味も影も墓も光のラインも、役者を含めた舞台全てに意味が生まれた瞬間でした。
あ、あとあの、LED見ました?あのLEDも綺麗で船のシーンに欠かせませんでした
あれ、照明チーフのファインプレーなんですよ。
自分は存在すら知りませんでした。
照明LINEに「私たちの勝ちです」という文と共に明かりのついたLEDの写真が送られてきた時はこれ使えるのか!?って大興奮でした
照明がつかないとなった時には照明なしでやるしか……、と腹を括ってはいましたが、今あの照明を知ってしまって考えるとあれは結びがあますぎたようです。
・音響さん
音響さんも特別演出ありがとうございました。客入れのBGMから無機質な環境音にガラッと変わるのがすごくいいです。
そしてやはり船のシーン最高ですね!
今回音響と照明は合同で会議を行ったのですが、あのBGMが流れたら照明班も一緒に盛り上がるしかないという感じで一同大興奮!
正直他のシーンと同様大人しめな曲を想定していたのですが、こんないいもの聞いてしまったら採用するしかありませんでした
テクリハ中、この音含め3つの音源合わせてなんて急な無茶振りをしてしまったのですが、文句の一つも言わず快く対応してくださりありがとうございました。
ばっは聞いても難しいなくらいにしか思わなかった私ですが、今回の舞台音響を聞いて、音楽っていいなあなんて思ってしまいましたごめんばっは
・道具さん
道具は、まずスタンドが綺麗でしたね。煙草スタンドになり墓になり井戸になり、そしてまた最後に墓になる。私の好きな抽象道具です。
制作はいつも通り外で、この時期で、寒い中での作業でしたね。ペンキも塗る作業なので、服装も汚れていいものでなければいけませんね。一人暮らしに汚れていい服、そんなの持っているのは少数派でしょう。
半袖着てでも来てくれてありがとう。
おかげ様であのような綺麗な道具ができました。
そして道具チーフさん、意見があっちゃこっちゃいく私のわがままに付き合ってくださりありがとうございました。
最初船作るかもと言ったとき顔が曇りましたよね。わかります。私が同じことを言われたら「台パン< x <往復ビンタ」の何かしらのxをしている自信があります。
なのに曇りながらも優しく微笑んでくださったおかげで今回の舞台案に持っていくことができたと思います。
小道具も、今回数あって大変なのに集めていただきありがとうございました。煙草、あれ作ってもらったやつなんですよ。稽古中に使う用のものまでいいものを作ってくれました。芭蕉さん曾良くん女さん、彼らの肺は綺麗ですよ!
・衣装メイクさん
衣装メイクさん、めっちゃ丸投げでした!すみません!本当にすみません!!
そしてめちゃくちゃ綺麗でした!ありがとうございました!!!!!!!!
本当にチーフさんにまかせっきりで、それなのにあんなにいい役者さんが登場してもう土下座感謝ものです!
まずは芭蕉曾良羽織、あれがまあ様になるんですよ。初っ端での煙草のやり取りで袖を使っていましたが、あれが時代感の表現として最高ですし、持っている煙草とのギャップになっていました。統一感という面もよかったです。流石師匠と弟子。女が登場した時の二人の時代間の差というところでもいい導入だったように思います。
そして何より女アトムの白黒対比!
白いアトムは手前で黒パンチに、黒い女は奥で白いスクリーンに映えていましたね。
そんな二人が同じ線上で並ぶのは本当に綺麗でした。
・情報宣伝さん
ポスターやばいっす。
いや確かに柳とか橋とか風景とか、そんな話は出ましたけど、会議で話し合ったのってわりと曖昧なものばかりだったと思うんです。
あんなすごいものが出来上がるなんて聞いてませんし想像できませんよ!
演劇関係なく、絵を専門にしている一学生として素直に嫉妬します
あのポスターの良さについて語ったらほんとキリがないです。
この上なくいいポスターでした。
パンフレット、俳句よかったですね。
あんなの思いつきませんでした。575で募集掛けているのに77付け足して回答している某チーフがいたのは面白かったですね!おまけに返歌も求めてましたし
ともあれ今回にぴったりお題でした。
最後に
私はシリアス全開なお話よりもコメディチックなお話の方が好きです。それは、作る側がわかりやすく楽しいからです。
もちろん公演をする以上、見てくれる人たちにいいものを届けようとすることやクリエイティブ精神のもとより高いクオリティを求めるのは欠かせません。
ただ、これらは本番に意識を向けたものです。
演劇は創る時間がそのほとんどを占める活動です。
私はその創る過程も大事にしたい、つまり楽しくしたいと考えています。
「流れるー能―隅田川より」には、そんな楽しさがありました。
コメディ要素のある掛け合いが多く、シリアスな内容なのに芭蕉と曾良の明るい旅の始まりが描かれて幕が閉じる。
掛け合いの面白さとお話の面白さが綺麗に共存するこの脚本で公演を行うことができたのは私にとってとても嬉しいことでした。
この公演では、笛の皆に助けられました。
皆というのは、「母ちゃんこれ買ってよ~みんな持ってるんだよ~」の皆でなく、本当に皆です。
私は曖昧な指示が多く、役者さんに各々人物像を練ってもらうことも多々ありましたし、各部署の会議でもなんとなくのイメージを伝えることばかりでした。
そんな状態でも、その分かりにくい指示からなんとか意図を汲み取ろうと努力してくださったり、持ち前の経験と技術で最良の手を提案してくださったりしたおかげで、無事公演を終えることができました。
こんな私についてきてくださり、本当にありがとうございました。
そして舞台監督さん、代表、力不足の演出を支えて下さりありがとうございました。私がのびのびと演出をすることができたのはお二人のお力添え会ってのことです。
この公演をできたことを幸せに思います。
それでは、失礼します。
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